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蓼科・1989

もう30年も昔の話。

チェロのレッスンを受け始めて間もない頃で、当時の先生が室内楽を活発に演奏しておられた影響もあって、私も室内楽というものをやってみたかったのです。でも周りには同好の志はおらず。

たまたま見つけた音楽雑誌の広告に「蓼科音楽祭」というのがあって、これだ!と思いました。

今も蓼科音楽祭はありますが、どうも昔のとは違うもののようです。

’89年当時はピアニストの先生の蓼科の別荘に、主に音大の学生が集って著名な講師陣のレッスンを受けて演奏会で締めくくる合宿のようなものでした。その中でも初級コースが設けられて一般の参加も出来たので、私はハイドンのピアノトリオを選択して参加しました。

中級や上級の課題曲は、メンデルスゾーンのピアノトリオ第1番、フォーレのピアノカルテット、ブラームスのピアノトリオ第1番カルテット第1番、シューマンのピアノカルテットなどなど。

自分と同年代の子たちが煌めくような名曲を堂々と演奏するのを初めて目の当たりにして、その名曲たちとともに強烈に憧れの気持ちを抱きました。

それに講師の先生方も楽しそうで、講師演奏のためのリハーサルを夜中にされていて、メンデルスゾーンのピアノトリオの終楽章をいかに速く弾くかで大騒ぎされているのを、文字通り壁の隙間から覗き見したのも覚えています。

講師は桐朋のピアノと弦楽器の先生方が多く、すでに有名人だった古沢巌さんや、弦にはN響からも何人もいらっしゃっていて、当時のコンサートマスター徳永次男さん、お兄さんでチェロの徳永兼一郎さん、そして現在の師匠木越洋さんも。

木越先生は合宿中の指導はされず講師演奏の時だけ顔を出されてたと思います。

あの時にはまさか木越先生について勉強させてもらえるなんて思いもしませんでしたし、チェロ教室をもって自分がレッスンしてるなんてことも想像だにしないことでした。

そしてつい最近あるお誘いを受けたのですが、マロさんこと篠崎史紀さんとブラームスのピアノカルテットを弾きませんかというものでした。まさに30年前の蓼科で出会って以来ずっと憧れていた曲です。いわゆる演奏会ではありませんが、公開リハーサルとしてマロさんに練習をつけていただくのをお客さまにみていただくというイベントらしいです。

私のチェロで通用するのかも不安ですが、憧れの曲を素晴らしいメンバーと演奏出来るチャンスが巡ってきたんだと、おそるおそる参加表明をしました。

蓼科での30年前の思い出がただの点だったのが、ここにきて線になって繋がったようで、面白いな〜!と驚いています。

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